ごあいさつ
桃花塾は、1893年に岩﨑佐一が教育者の道に第一歩を踏み入れたことに端を発しています。国木田独歩と出会い、ペスタロッチの著書にふれ、当時悲惨な状況におかれている障害のある子ども達の存在を知り、専門領域の研鑽を積み重ねていきます。そしてついに1916年に、既成の枠を超えた新しい事業を開始いたしました。
しかしながら、道なき道を歩み出した創立者達は様々な困難に遭遇します。設立趣意書に記しているように、当時の日本は明治開始よりわずか50年弱、「社会の大変革によって貧富の差はさらに増大し、弱者の増加、文化は外界に止り、内面は進歩に逆行している。人情日に疎く、家庭においては愛情薄らぎ、精神生活の荒廃が児童の環境に影響を及ぼし、教育を破壊し、障害児、非行に走る子どもを増加させる傾向にある」(要約)状況でした。
桃花塾運営については、度重なる災いのために後援会からも閉園を提案されたようですが、創立者は断念しませんでした。「子どもの生のエネルギー」を信じ、子ども自身が「教育養護」を要求する権利を有するとする彼の信念を貫き通したのです。
援助の手を差しのべてくれる人々も現れて、当初からの「科学に基づいた個別の教育支援」の方針に従い事業を継続していきます。現在地への移転は1934年です。若い日々に学んだスピノザの思想が現在地決定にも影響を与えたようです。「人間と他の生物との共生、人間と自然環境の相互作用による調和のある施設づくり」は、今日に至るまで運営の根幹となっています。
今、私達に求められる重要なことは、支援を必要とする人々の生のエネルギーを信じることから支援を開始しなければなりません。利用される一人一人のニーズが尊重され、楽しく生き生きとした日々を過ごして頂けるよう、スタッフと共に日々努力を重ねてまいります。
桃花塾の理念とその具現化
桃花塾の理念は「生命への畏敬」です
桃花塾内の木々におおわれた一角にひっそりとたつ二つの石碑があります。
そのうちの一つは「本源の塔」です。岩﨑佐一が著書『人間を生く第三集』に述べているように、人間の根源的意義を哲学的に具現化したものです。
「本源について―現在、地球上に存在している人類は、太陽と地球の歴史に始まって、数億年の生物の歴史を経てきたものです。即ち、「本源」に立ち戻って考えれば、人類とても、単細胞動物以下あらゆる生物と存在の意味を等しくしています。植物でも動物でも生まれた条件にめぐまれずに消えていくものは限りなく存在します。しかし、地上に生命を与えられるものとしては、同じ条件であり平等であると考えられます。」
[1963(昭和38)年建立]
二つ目は、「萬霊相愛」碑です。生きとし生けるものすべての生命を慈しむことを具現化した碑です。
「愛について―あらゆる生物は個体としては相互に断絶しているが、それを相互に深く結びつけるものは、本能的な親子、男女の間の愛に始まって高められた人類愛です。条件にめぐまれずにうまれた人の子どもを他の個体が相抱いて生をとめしむることは、ただ人類の世界にあらわれた高度の愛である。」
[1987(昭和62)年建立]
この二つの碑の銘は、早稲田大学名誉教授、故・栗田直躬先生に揮毫していただきました。石碑の背面は小さな林ですが、野鳥・タヌキなど小動物や、野生の草花が見られます。創立者は、「人間と他の生物との共生」、「人間と自然環境の相互作用による調和ある施設づくり」の実現を目指しました。一定区域をみだりに人間が立ち入らない空間として保護しました。その精神を今も受け継ぎ、続行しています。
桃花塾とは
桃花塾は、1916年(大正5年)2月に「生命への畏敬」を基本理念として創立いたしました。
大阪市内から電車でわずか30分ですが、豊かな緑の地にあります。
以来、障害のある人々の価値ある生活の向上をめざして、様々な事業を展開しています。
サービス提供の実践の基本はジェントルティーチングです。